風の谷のナウシカ

第364号 風の谷のナウシカ

宮崎駿の傑作SFです。高度に発展した科学文明の世界が、戦争によって破壊され、土地は汚染されます。このままでは人類は終わってしまうという危機感を持った人達が、人類救済のための壮大なプログラムを作ります。今後争いが起これば起こるほど、腐海と呼ばれる森ができるようにします。そこでは、木々が瘴気を出すので人は住めなくなる。

しかしこの腐海は、地球を清浄にするためのシステムなのです。つまり、後世の人たちが争えば争うほど、地球は綺麗になっていきます。それと共に、人類の卵を保管しておき、清浄になった後の地球で孵化させることで、人類を救うというものです。このシステム誕生から千年以上経って、主人公のナウシカが生まれます。近隣諸国の愚かな戦争に巻き込まれながら、ナウシカはこのシステムの存在を突き止めます。

さらには、自分たちの身体は汚染に適合しており、清浄な世界では生きていけないことを知ります。そんなナウシカが、今を生きる汚染された人々のために、過去のシステムと対決し、それを破壊する話です。といった粗筋はさておき、ナウシカはストーリー展開自体がとても面白いのに加えて、セリフ回しがカッコ良い! システムの管理人との対話はこんな感じです。「人類は私なしには滅びる」「それはこの星が決めること」「お前は危険な闇だ。生命は光だ」「違う。命は闇の中に瞬く光だ!!」なんて、暗記しちゃいました。人類の卵を滅ぼした直後のナウシカと悪人の王様との対話も好きでした。「自分の罪深さにおののきます。私たちのように凶暴ではなく、穏やかで賢い人間になるはずの卵です」「そんなものは人間とはいえん!」 

というわけで、憲法9条の話です。戦争放棄の現行憲法は、日本が戦争に負けた後にできました。もともとは連合国が敗戦国日本の武装解除のために定めた憲法でしたが、一般国民だけでなく多くの知識人に受け入れられて現在に至っています。しかし考えてみると、「戦争の放棄」で自衛戦争まで禁止されているというのは、かなり無茶な規定です。実際問題としてご近所にかなり問題ある国々があることは間違いありません。それなのに自衛戦争放棄なんて頭お花畑ではないかと言いたくなる気持ちもよく理解できます。

しかし、そんな問題点は百も承知の上で多くの一流知識人が憲法のこの条項を支持しました。何故だろうと子供の頃から不思議に思っていたのですが、最近納得のいく説明を知りました。「どうせ間違えるのだから、より安全なところで間違えるように予め設定しておく」という思想によるものなんだそうです。ウクライナに対するロシアの攻撃はけしからんと思います。でも、それに抵抗したウクライナの現状を見ると、最初から戦わなかった方がましだった気もします。日露戦争時の日本みたいに、部分戦で勝ったところで、国際社会に仲裁を頼んで戦争を終わらせるのがベストなんでしょうけど、そんなに上手くいかず戦争は泥沼化しています。それなら最初から「より良い方に間違える」よう、「戦わない」に設定しておくのが、現行憲法の考え方なんですね。この憲法を支持した人たちは、将来の日本国民を全く信用していなかったようで、可笑しく感じてしまう一方、このような英知を、私も受け継いでいきたい気持ちもあるのです。

ナウシカの話に戻りますと、彼女は、「今を生きる汚れた人間」のために、過去のシステムだけでなく「未来の人類の卵」も破壊しました。「な、ナウシカさん止めて下さい」と思う一方、爽快な気持ちになったことも事実です。憲法9条の熱心な支持者の中には、非常に好戦的・攻撃的な人達がいると感じています。「国民を守るには戦力が必要だ」という、ある意味もっともな主張に対する罵詈雑言など聞くに堪えない。そんな人達から「日本は憲法9条なしには滅びる」などといった一方的な主張を聞かされると、私もナウシカにならって言い返したくなるのです。「それは今の国民が決めること!」

 

弁護士より一言

何度も書いて恐縮ですが、コロナワクチン接種後に、眉毛がすべて抜け落ちました。その後、スポーツジムに通うことにしたんですが、コーチのお兄さんはガタイが良くて、少し怖い感じの人でした。ところが話してみると、しっかりと敬語で丁寧に応答してくれます。親しくなった後、そのお兄さんが教えてくれました。「眉毛がないのでその筋の人かと思って、最初は緊張してたんです!」                                                                                          (2024年5月1日  大山滋郎)

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