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贋金つくり(4) 


企業にとって、キャッシュの流れは非常に重要です。先に商品を渡しておきながら、入金はずっと先だなんてビジネス・モデルですと、最悪、黒字倒産のおそれさえ出てきます。企業の健全な運営のためには、出来る限り早く入金してもらう必要があります。更に一歩進みますと、先払いにしてもらい、商品より先にお金を受け取ることが一番望ましいわけですね。

そのための手段として、企業の発行する回数券なんていうものがあります。「先払いしてもらえれば2割引にします」とか、「10回分の金額で11回分の回数券が手に入ります」といったものです。これなども、たとえば紙に印刷した回数券が、お金に化けるのですから、贋金といえますよね。

こういった「贋金」につきましては、法律的に問題になることはまずないだろうと考えていました。ところがあの有名な、NOVAの事件が起こったわけです。

英会話学校で、長期の授業料を前金にすると、非常に高い割引を認めるというシステムですね。ところが、解約のときにお金を返さないとか、約束どおりの授業を提供できないといったことで、大問題に発展したわけです。前払いシステムも、やり方によっては法的問題になります。企業としても、「贋金つくり」をしている自覚をもって、気を引き締めていくべきなんでしょう。

企業の収益にとって、前払いシステムや回数券の一番良いところは、最後まで使う前に、お客さんの方で回数券を無くしたり、忘れてしまうことなんです。これを一歩進めますと、継続的支払いシステムを使用した「贋金つくり」が可能となります。
ロバート・バーという人が、1906年(日露戦争のころです)に書いた推理小説に、「健忘症連盟」というのがあります。頭の良い詐欺師の話です。夏目漱石の「吾輩は猫である」でも取り上げられていますから、当時有名な話だったのでしょう。

この詐欺師は、お客さんに品物を分割払いで販売するんです。例えば、100万円のものを毎月1万円ずつ、100回払いで払ってもらう。そうしますと、お客さんは何となく毎月お金を支払うのが習慣になってしまい、完済しても101回目以降もそのまま払い続けることになるわけです。

当時と比べて現在は、継続的支払いシステムを使った「贋金つくり」は遥かに容易になっていますね。銀行引き落としやクレジットカード課金などありますから。私も、特に何のサービスも受けないまま、何となく会費を払い続けているカードや、会員資格など、かなりあることに気が付きました。

えっ、なんですって。「これといったサービスもないのに、何となく払い続けるなんて、弁護士の顧問料じゃないか。」ですって。

ドキッ。
す、済みませんが、急用を思い出しました。そ、それではまた半月後に。

 

弁護士より一言


小学生の娘が学校から帰る前には、妻が家に戻るようにしています。ところが先日、子供の下校時刻を間違えて、1時間近く娘を家の外で待たせてしまったんですね。慌てて戻ってきた妻に、「こんなに長い間待たせてどうするの。」と、娘はプンプン怒ったそうです。

「一度だけトイレに入ったけどさあ。ママ、鍵をかけ忘れていたよ。」

一体何を言っているのか分からず、よく聞いてみたところ、裏庭のガラス戸の、鍵がかけ忘れられていたので、そこから中に入って、トイレに行ったとのことでした。ところが、トイレの後また外に出て、妻の帰りを待っていたようです。

うちの娘は、馬鹿じゃなかろうか! こんなことは考えてはいけない

と思ったのですが、心の中に疑念の黒雲が湧いてくるのを、抑えきれなかったのでした。

ただ、娘の場合、親が鍵を開けて家に入るのが習慣になっていましたから、まさに100回支払いを続けるうちに、101回目も同じようにしなくてはいけないと思ったのかもれません。習慣というのは怖いなと感じたのでした。(でも、やっぱりお馬鹿です。)

(2009年6月16日 第7号)

 

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