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肩の上の弁護士 

ショートショートの神様 星新一に、「肩の上の秘書」という小説があります。全ての人が、肩の上に機械のインコを乗せている、近未来の話ですね。このインコが、秘書の役目をしてくれるわけです。人間が簡単な指示を出すと、インコはその場の状況、雰囲気を考慮して、丁寧に相手方に話し始めます。逆に、相手方の長い話については、インコの方で要約して、ポイントを教えてくれるのです。
 
例えばセールスマンが、「商品を買え」とインコに言うと、インコはお客さんに向かって語り始めます。「本日ご紹介したい商品ですが、小型の電子クモです。こちら背中が痒い時に自動でかくことが出来ます。痒いところに手が届く品となっています」 そうしますと、客側のインコが「孫の手の営業です」と通訳するといったかんじですね。
 
考えてみますと、このインコの役割と、弁護士の役割は非常に似ているなと思ったわけです。弁護士は、依頼者から聞いた言葉を、法律の言葉に直して相手方や裁判所に伝えるわけですね。依頼者が、「商品が壊れていたんだ!」と言えば、「瑕疵担保責任に基づく損害賠償と、契約の解除を主張します。」といった形で相手に伝えます。それとともに、相手方弁護士や裁判官からやってくる法律の言葉を、日常用語に直して自分の依頼者に伝えることになります。まさに、肩の上のインコと同じ仕事をしていることになりそうです。
 
このような、日常用語と法律用語の間の翻訳だけなら良いのですが、弁護士の場合、法律的というより、感情的な言葉の伝え方について、悩みがあるのです。例えば、依頼者の中には、相手方に対して非常に厳しい言葉を伝えてくれと言って来る方もいるわけです。しかし、いかに依頼者の頼みでも、本当にそんな言葉を伝えると、事件がますます紛糾してしまう場合がありますよね。そういう場合は、肩の上のインコになったつもりで、少し表現を和らげて相手方に伝えたりすることはよくあることです。これは、決して依頼者を裏切る行為ではなく、無駄な紛争を避けて、一番良い結果を得るための方策だと考えています。
 
ところが、弁護士の中には、依頼者が厳しいことを言いますと、それをわざわざそのまま伝えてくる人もいるんです。それどころか、依頼者以上に興奮して、さらにもっと厳しいことを伝えて来たりします。
 
「相手方の主張はアウトオブ論外である。」「門前の小僧習わぬ経を読むという言葉もあるが、耳学問で書面を書くと、恥をかきますぞ。」などということを言ってきて懲戒処分になった弁護士もいましたが、こういうのは確かにまずいですよね。
 
さらには、言わない方が良いことを、文書にして提出してくる弁護士もいるんです。「貴方のやり方については、常軌を逸した非人間的なものであり、当方の依頼者も怒り心頭であります。」だなんて、わざわざ書いてくるんですね。口頭で言って来れば、当方としても肩の上のインコになったつもりで、適当に弱めて報告できます。ところが、文章で出されますと、こちらとしても自分の依頼者に見せざるを得ませんので、ますます紛争が拡大してしまうのです。ううう。。。
 
少なくとも弁護士は、肩の上のインコとして、余計なことは伝えない訓練を積むべきだと思ったのでした。
 

弁護士より一言

 
「わたしもそんなインコほしいな。」今回のニュースレターを読んだ妻から言われました。例えば妻が用意した手土産を、私から母に渡すような場合です。妻はいつも私の両親の好きそうな食べ物を考えて用意します。いろいろと由緒があるそうです!!(なんのこっちゃ!) その辺のところを、妻としては私の両親に伝えて欲しいと期待しているんです。
 
ところが現実に私が両親に渡すときには、「はいこれ。」としか言わないのです。どうも私は「肩の上の秘書」の役割も出来ていないそうです!
 
ニュースレターも、ようやく100号を迎えました。
 
今後ともどうかよろしくお願いいたします。
(2013年5月1日 第100号)

 

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