弁護士の剣客商売

弁護士の剣客商売 

「ヤバい経済学」という、世界で400万部売れたベストセラーがあります。経済学の立場で、世の中の様々な事象に切り込んでいく本です。その中で、日本の相撲の八百長問題も取り上げられています。
 
相撲の勝敗を分析すると、7勝7敗の力士が勝つ確率が非常に高いということです。特に相手が8勝6敗の場合など、統計的にはあり得ない確率で、7勝7敗の力士が勝つわけです。明らかな八百長があるとしか考えられなという主張です。まあ、そうなんでしょうね。
 
というところで、今回の主題の「剣客商売」です。言うまでもなく、池波正太郎の傑作時代小説ですね。
 
主人公は秋山小兵衛という、小柄ではありますが、剣の達人です。70にもなって、孫のような若いお嫁さんと暮らす、小粋な人です。 
 
この人の息子が、大柄で無骨、実直な秋山大治郎です。こちらも剣の達人です。この2人が、田沼意次の時代を背景に、悪い奴らをバッサバッサとやっつける、痛快な時代小説です!
 
その「剣客商売」の中に、実は八百長の話しがあるんです。秋山大治郎は、まだ若いですが剣客として名前が売れています。そんな大治郎に、立会いをしてくれという依頼が来るわけです。相手は、ある藩への仕官を希望している人なんです。その藩では、その人の実力を試すために、剣客として有名な秋山大治郎との立会いを条件としたわけです。大治郎に勝つことが出来たならば、仕官を認めるというわけですね。
 
これを聞いた、父親の小兵衛は、「それで相手が仕官出来るのなら、負けてやれ。」と大治郎に言います。まさに八百長試合をしろというわけです。実直な大治郎は、このような「八百長」をすることに悩みます。
 
大体、いくら息子に対してでも、関係ない親が、どうこう口を出すのは如何なものか?なんて、私なら考えてしまいそうですね。しかし、大治郎は、最終的に勝ちを譲ってやります。それで相手方は、無事に仕官が出来たわけです。
 
この話をどうとるかは、人によって違うかもしれません。ある意味、雇用主である藩をだました行為でもあります。もっと仕官に相応しい、他の人の仕事口を間接的に奪ったと考えることも出来そうです。
 
それでも私は、小兵衛と大治郎の「勝ちを譲る」という選択に、非常に共感を覚えるのです。これまでも、多くの日本人にとって、この感覚が共有されていたからこそ、7勝7敗の力士に対して、既に8勝6敗で勝ち越している力士が勝ちを譲るという風習が認められていたように感じるんですね。
 
弁護士の仕事をしていると、「ここは勝ちを譲った方が良いのではないか?」なんて思うときがあるのです。特にこちらは大して損害がなく、相手がそれで助かるなら、意地を張ることもないのではという場合です。勝ちを譲ることで、無用な恨みを買うこともなくなりますし、長い目で見れば、依頼者のためにもなるはずです。
 
そうは言いましても、弁護士の立場で依頼者に、勝ちを譲るように勧めることは、やはり遠慮があります。
 
小兵衛が大治郎を説得できたのは、お互いの間にそれだけの信頼感があったからだなと思い至ったわけです。勝ちを譲るかどうかの問題以前に、私もそれだけの信頼関係をお客様との間に作らないといけないなと、改めて感じたのでした。
 

弁護士より一言

秋山父子のような関係を羨ましく思うのは、私だけでは無いはずです。まさに親子の理想です。剣の達人が達人を生んだ秋山父子のようなのを、鷹が鷹を生んだ「親子鷹」というんでしょう。
 
うちの場合、小2の息子に、「僕って何で病気にならないんだろう?」と聞かれました。運動会の徒競争がドキドキして嫌なので、病気になって休みたいんだそうです。それを聞いて、私も子供のころ、やはり運動会が嫌で、雨が降るように祈っていたことを思い出しました。うちみたいのを「親子トンビ」というのかと思うと、可笑しくなったのでした。(2013年11月1日 第112号)
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