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寇準の示談交渉(1) 

「初めて読む中国古典なら、何が良いかな?」なんて聞かれますと、私は「宋名臣言行録」を推薦しているんです。面白くて、役に立つ本だと思います。
 
例えば、若くして副宰相になった人の話があります。当然周りの人からは、やっかまれるんですね。副宰相が歩いていると、「あんな若造が副宰相とは、世も末だ。」などと、悪口を言う声が聞こえてきます。そこで、御付の人が、その者の名前を聞き出そうとします。副宰相はそれを止めさせて言うんです。「誰が言ったのか分かると、忘れられなくなる。別に知らないでも、こちらには何の問題もないのだから。」
 
良い話でしょう! 私もこれを読んでからは、いやな訴訟指揮をする裁判官の名前は、憶えないようにしているんです! (おいおい)
 
宋の天下統一のときに、南京攻略をした将軍の話も、とても良いんですね。南京に攻め入る直前になって、将軍は床に臥せってしまいます。部下たちがお見舞いに来て、「将軍が良くなるためには何でもします。」と言います。それに答えて、将軍は言うんです。「自分の病は薬では治らない。君たちが南京攻略にあたって、罪のない市民を一人も殺すようなことはさせないと誓ってくれれば、直ぐにでも回復するのだ。」
 
かつての日本軍の「南京大虐殺」は、針小棒大に誇張されているのは確かでしょう。しかし、あれだけの悪評がたつこと自体、宋の将軍に比べて、日本軍の緊張が足りなかったとしか思えないのです。
 
そんなわけで、本日は「名臣」の代表人物みたいな寇準の話です。宋の時代は、北方民族にいつも侵略されていました。そうした時代に、寇準は、弱気な皇帝を戦争の前線に連れてきて軍隊の士気を高めたり、逃げようとする皇帝を引きとどめたりと大変な苦労をするわけです。そんな中、敵との和睦の話が出てきます。宋の方がお金を渡して、戦争を止めてもらうんです。皇帝は、この闘いが終わらせるのなら、百万払ってもよいから話をまとめて来いと、使者に言うわけです。
 
ところが後から寇準が使者を呼びつけます。「いかに陛下の言葉でも、和睦の金額は絶対に三十万を超えてはならない。もし、上回った金額で帰ってこようものならただちに斬り捨てるからな!」こう言われた使者は、死ぬ気で交渉して、年間三十万の支払いで和睦してきたという話です。
 
実は、こういうことって、弁護士の行う和解交渉や示談交渉でもあるんですね。例えば刑事事件で、示談して告訴を取下げて貰うような場合に、「いくら払ってもいいから、絶対に話をまとめてください。」と言ってくる、宋の皇帝みたいな依頼者がいます。その一方、「これ以上は一銭も出せません!」という、寇準のような依頼者もいるわけです。
 
依頼者が「皇帝タイプ」ですと、やはりそれなりの金額を支払うことになる場合が多いように感じます。反対に、「寇準タイプ」の依頼者の事件ですと、比較的低い金額で話しがまとまることが多いのも事実です。それなら、寇準式の交渉が良いのかと言いますと、どうもそうは思えないのです。
 
ということで次回に続けます。
 

弁護士より一言

寇準は若いころ、勉強をしないで遊んでばかりいたそうです。教育ママだった寇準のお母さんは、いくら言っても勉強をしない息子に腹を立てます。手元にあった分胴を投げつけたところ、寇準の足に命中し血が流れたそうです。
 
ここからが寇準の偉いところですね。母親がこんなに取り乱したのは自分のせいだと深く反省し、勉学に励んで、立派な人になったのです。うちの子供たちも、勉強をしないで遊んでばかりいて、妻に叱られます。しかし寇準と違って、叱られると、「今ちょうど勉強しようと思っていたのに、そんなこと言われたからやる気が無くなった!」と言い返すんです。な、情けない。。。
 
しかし、このセリフって、私が子供のころ、自分の母親に言ったのと、全く同じものなんですね! 
 
我が一族から「平成名臣言行録」に載るような人物が出るわけがないなと、妙に納得したのでした。
             (2014年2月1日 第118号)

 

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