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寇準の示談交渉(2) 

寇準(こうじゅん)の話の続きです。この人は、メチャクチャ優秀な上に、剛直な「名臣」として有名なんですね。若いころ、皇帝にある案件を奏上したんですが、皇帝は聞き入れません。しかし寇準はあきらめない。皇帝の袖を掴んで、退出させないで、裁可を求めます。皇帝が諦めて認めると、悠々と退出したなんてエピソードが残っています。
 
そんな凄い人ですから、弱気な皇帝を補佐して、戦争において敵と有利な和睦をまとめあげたわけです。
 
ところが、寇準のような人ですと、当然敵も多いんです。大した能力は無くても、他人を貶めることにかけては天才的って人が、いつの時代でも、どんな組織にもいますよね。そういう人が、皇帝に対して、寇準の悪口を言います。寇準は、自分が有利な条件で講和をしたという業績を上げるために、皇帝にリスク負わせただけだというんですね。
 
「バクチで負けが続くと、イチかバチか財産を全てかけて勝負をするものです。寇準殿がしたのは、まさにそのようなことです。」「寇準殿は、皇帝陛下を賭けゴマにして、最後の大勝負をしただけで、陛下のことなど考えていなかったのです。」「寇準殿はあの戦いに敗れても故郷に逃れてひっそり暮らすこともできますが、陛下は違います。寇準殿は失うものが少なく、陛下はすべてを失う状況だったのです。」これを聞いて、皇帝は寇準に対する信頼をなくしていくわけです。
 
こんな告げ口に惑わされる皇帝も、困った人です。しかし、告げ口に全く根拠がないとも思えないのです。
 
弁護士の場合、無罪判決というのはめったに取れません。まさに、弁護士の勲章みたいな意味があります。痴漢事件のような、比較的軽い事案で、「自分は絶対にやっていない。」という人は相当数います。弁護士としては、絶対に争いましょうと言いたくなります。しかし、たとえ一年後に無罪と認められても、依頼者の失うものは非常に大きいのです。嘘でも罪を認めて示談すれば、大したことなく済みます。こういう事件が来ると、私は寇準の話を思い出すんです。「この事件によって、弁護士が失うものはない。それに対して、依頼者は非常に大きなものを失ってしまう。無罪という勲章の為に、依頼者を賭けゴマに使うことにならないだろうか?」
 
こういうことは、和解や示談のときにも問題となります。有利な条件で和解が出来れば、弁護士としては自分の成果として自慢できます。しかし、うまくいけば良いのですが、失敗したときのリスクは、弁護士ではなく依頼者が被るわけです。そうであれば、弁護士としても慎重にならざるを得ないとも思うのです。
 
ただ、弁護士がどのような形で対応しようとも、依頼者との間に信頼関係さえあれば、大した問題にはなりません。ところが、これが大変難しい!
 
同時代の人が、寇準について、確かこんなことを言っていました。「寇準は、人が千言使っても語れない思いを、一言で片づけてしまう。自分は若いころから優秀なので、出来ない人の気持が分からない。」
 
弁護士の場合、寇準ほどではなくても、若いころから勉強が出来ます。弁護士になると、周りが「先生。先生。」と持ち上げてくれます。依頼者の千言使っても語り尽くせない思いを、「簡単なことを長々と回りくどく話すなあ。要はこういうことでしょう。」なんて、一言の法律用語で片づけてしまったりします。(他人ごとではありません。わ、私のことです。ううう。。。)
 
寇準ほど優れた人でも陥る過ちを、弁護士として肝に銘じておきたいと思うのです。
 

弁護士より一言

14日のバレンタインデーに、小学校2年生の息子が、「チョコレート一つも貰えなかった」と、がっかりしてました。そこで私が、「パパだって、貰えなかったから、大丈夫だよ!」と励ましたんです。
 
それを聞いていた中学1年の娘が言いました。「パパって、ママ以外からは貰えないの! それって、やばくない?」 
 
し、失礼な。「パパだって本気を出せば・・・」と言いかけて、負け惜しみなので止めておいたのでした。
 
 (2014年2月16日 第119号)

 

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