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その数学が弁護を決める

「その数学が戦略を決める」という、とても面白い本があります。エール大学の法学部の先生が書いた本なんですね。統計的な知識から、機械的に導き出される判断の方が、人間が経験に基づいてする判断よりも、遥かに正確だということを説明しています。
 
例えば、ワインの品質をどうやって予測するかという問題があります。数年後に熟成したときに、その年のワインがどれほどすぐれているのかを、ワインを作った時点で予測するわけです。普通の人間にはそんなことできませんよね。そこで、神的な能力や舌を持つという「専門家」がそれを行ってきたわけです。
ところが、これに対して統計学の学者が異議を申し立てます。ワインの質は、その年の気温や降雨量を簡単な数式に当てはめれば、予測できるというわけです。
「専門家」たちはこれに対して、非常に強く反発します。「そんな単純なことで、神秘的なワインの質が分かってたまるか!」というわけです。ところが数年たって結果が分かったところ、「専門家」の「経験」による予測よりも、統計に基づいた簡単な数式による「予測」の方がはるかに正確だったというわけです。
 
この本には、こういう面白い話がたくさん載っています。臨床医の行う患者の診察などの例もあります。こちらも、幾つかの統計上重要なポイントだけ確認し、そこから機械的に判断した方が、人間の意思が「経験」に基づいて診断する場合よりも、遥かに誤診が少ないという結果が出ているということです。ほ、ホントですか! もしそうなら、お医者さんよりもコンピューターに診断してもらう方が良いことになりそうです。

さらに面白いのは、米国の最高裁の判決予想の話しです。さすが法学部の先生が書いた本ですね!
アメリカでも、重要な法律判断などは、最高裁判所で判断されます。そこで、複数の下級審判決が、最高裁で維持されるのか、否定されるのかを予測したそうです。統計的な情報から、下級審判決がリベラル的か等、簡単な情報を数式に入れて計算したものと、専門家たちによる判断とで競いました。結果は、数式による判断の圧勝だったということです。もしそうなら、「法律専門家」なんて、要らないじゃん!
 
しかしこうなってくると、そもそも裁判において、人間の裁判官が判断するのが良いのかという問題が出てこざるを得ないでしょう。今までは裁判官が、知識と経験に基づいて、裁判をしています。しかし、この本で書かれていることが正しいなら、裁判自体、一定の統計的根拠から、数式によって自動的に導き出すことが可能になるはずです。その方が、人間につきものの「偏見」や「思い込み」がないだけに、より正しい判断になってくるというわけです。ワインや病気の判断ができるなら、裁判での判断ができない理由はないでしょう。ということで、ハット気が付きました、弁
護士の仕事はどうなんだよ?
 
弁護士のところに法律相談に行く代わりに、一定の情報をパソコンに打ち込むと、より精度の高い回答が得られる時代は、もう目の前に来ているように思えます。一定の情報から、あなたに必要な証拠はこれとこれですと、コンピューターが指示までしてくれて、証拠集めのアドバイスや、興信所の紹介までするようになったときに、弁護士の役割として何が残るのか?
全ての「知的業務」に言えることですが、弁護士としても真剣に考える時代に来ているのかもしれません。
 
 

弁護士より一言

前回の「一言」で、小学生の息子が下ネタを大好きだと書いたところ、こんなコメントを頂きました。
大山先生も、「ちょっとだけよ~、あんたも好きね~」「うんこちんちん」「かとちゃん、ぺっ!」「コマネチ!」くらいは、自由に使いこなしていたのでは・・・とのご指摘です。ご、誤解です。わ、私は自由に使いこなしてなどいなかったのです。か、軽くたしなむ程度だったんです。(なんのこっちゃ。。。)
ちなみに、私より20歳以上若い、事務所の若手弁護士達に聞いたら、みんなこれらの言葉を知ってました。こういう下ネタは、時代を超えて強いんですね!
 
(2016年2月1日発行 第166号)

 

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