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弁護士の9マイル

「九マイルは遠すぎる」というのは、今から70年ほ ど前に作られた、推理小説の古典です。
いまだに、文庫本で読むことができる、名作です。ふと漏れ聞いた、道行く人の会話から、殺人事件を解決する話です。

「9 マイルも歩くのは大変だ。雨の中ならなおさらだ。」 というのが、漏れ聞いた言葉です。「こんな言葉から、一体何をどう推理するんだよ?」と思いますよね。私もそう思いました。でも、推理できちゃうのです!
「9マイル」というのは、14キロほどです。常識的には、歩く距離ではないでしょう。タクシーや、電車やバスを使う距離です。それなのに、雨の日にわざわざ歩かないといけない。これはおかしいだろうと、推理していきます。交通機関が使えない時間帯(真夜中 から朝早い時間帯でしょう)に、雨の中、何が何でも いく必要のある用事がある人の言葉に違いないとい うことです。
次に、「9」マイルというところにも着目します。通常は、正確な距離など、気にしない方が普通ですよね。そうであれば、「9」マイルと言わずに、丸い数字で「10」マイルと言うはずだと推理が続きます。うーん、そんな気もしないでもない。「9」 マイルというからには、明確に距離を調べたはずだと のことです。そして、このように距離を明確にするのは、市役所や駅といった公共の場所に、どこかから行 く場合だと推理します。公共の場所から、誰かの自宅 などに行く場合には、そんなに明確な距離は考えないだろうということです。うーん。ホンマかいな。。。
こんな風に推理を続けて、朝早い時間に、駅に電車が 到着するが、その駅からちょうど9マイル離れたところにホテルがあると判明します。そのホテルに宿泊し ている人が、誰にも気付かれずに、歩いて行ったに違 いないと、さらに推理が続くのです。
そこで調べると、その電車内で、殺人事件が起こったと判明します。おいおい、これは「推理」じゃなくて「妄想」だろうと、突っ込みを入れたくもなります。でも、面白い!
弁護士というのは、「言葉」で勝負する仕事です。ち ょっとした言葉をとらえて、依頼者の為に何か使えな いかと、常に考えることが大切です。そんなわけで、 私も街行く人の言葉に耳を澄ませるようにしていま す。少し前に、制服の女子高生達とすれ違ったときに、 「本当に嫌だよ。デブなだけでなくて、ハゲだよ。」 という言葉が聞こえました。思わず「私のことか?」 と心配しちゃいましたが、たぶん違います。(と、思 いたいです。。。)推理しようかなと思いましたが、あ んまり良さそうな話でないのでやめました。
スーツを着た二人連れの男性の言葉を漏れ聞いたこともあります。「やはりカレーか。キーマカレーなら味付けは?」これは悩みました。「カ、カレーに毒を入れて、殺人事件をたくらんでいるのでは?」と、警察に通報しようか3日ほど悩んだのです! あんまりアホなことばかり書くと、顧問先の皆様に見捨てられそうなので、このくらいにします。ただ、弁護士の仕事では、相手方が不用意に漏らした言葉から推理することは、大切なことです。和解の席などで、相手方がどの程度まで譲歩するつもりがあるのかなど、大切な情報をつかむことができたりします。
その一方、私もそうですが、多くの弁護士が、事件のことを話しながら歩くことなどよくあります。ついつ い夢中になってしまい、「9マイル歩くのは大変だ」 みたいな重要情報を垂れ流しにしているかもしれないのです。お客様の為に、本当に小さなことにも神経 を張り巡らせる弁護士になりたいものです。 

弁護士より一言

中学生の娘からの質問です。「角度のマイナスって、 どういう意味か分からない。」とのことでした。 そこで、「こうやってお辞儀するのが30度だろ。」 と、実演したんです。「お辞儀するどころか、こうやってふんぞり返ると、マイナス5度になるじゃない か!」 すると娘が言いました。「そうか! マイナスって、パパのいつものお辞儀のことなんだね。」 そ、そうじゃないだろう! でも、娘にそう思われて いたなんて。は、反省します。。。
                                     (2016年4月16日発行 第171号)

 

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