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第187回 その問題、法律学で解決できます?

法律学と経済学とは、ライバルみたいなもんですね。 ところが、最近は経済学の方が、法律学よりもはるかに元気がいいようです。「その問題、経済学で解決できます。」なんて言いきった、自信たっぷりのタイトルの本まで出ているんです。
最近の経済学で、一番重要な考えは、「インセンティ ブ」ですね。人に対して、「これをすればこれだけの 利益または罰(インセンティブ)を与える」ということで、人を自由に動かすことができるという考えです。悪い言い方をすれば、札束で釣れば、人は思う通 りに動くという考えですね。ただ、話はそんなに簡単ではありません。
この本では、誰に対してどんなインセンティブを与えれば、人を正しく動かすことができるのかを、実験を通して明らかにしていきます。 例えば、保育園に子供を迎えに行くのに、遅刻する親が多発します。この問題を、インセンティブの理論を使って解決しようとするんですね。遅刻した場合は、 いくらかの罰金を取るようにしました。ところが、こうしたことでかえって、遅刻する人が増えたということ です。この程度の金額を支払えば、遅刻しても良いんだなと、みんな理解したということです。でも、これなんか罰金の額をガーンと上げれば済む話に思えますね。どのくらいまで罰金額を上げれば、皆が遅刻しなくなるのか等、非常に興味があります。

その他にも、面白いインセンティブの話が沢山あります。子供に勉強させるには、どんなインセンティブを、どんな風に与えればよいのかなど、大真面目で実験していきます。うちの子にも、是非試してみたくなります!寄付金を集めるには、「利益」のインセンティ ブよりも、「名誉」や「見栄」のインセンティブの方がはるかに役に立つなどといった、とても実践的な内容がつまっています。

弁護士の場合、インセンティブで人を動かすという考 えに反発する人が多いように思います。法律の考えですと、「何が正しいのか」がまず来ますから、「利益で人を動かして、結果オーライならOK」といった考えには納得いかないのでしょう。しかし、現実社会では、弁護士自身インセンティブ理論の正しさを立証してきています。
例えば、国選弁護人の問題があります。 弁護人は、逮捕された被疑者に会いに行かないといけないのですが、そんなことはしたくないという人が沢山いたのです。しかし、1回行くごとにお金が出るよ うに制度を変えたとたんに、用もないのにせっせと通 う弁護士が大勢出てきました。は、恥ずかしい。

「その問題、経済学で解決できます。」と言い切る、 経済学の自信は、自分たちの理論を実験で試して、その有用性を検証しようという姿勢にあるのだと思い ます。理屈じゃなくて、現実に試してみようということですね。これは本当に素晴らしいことだと思いま す。ところが法律の世界では、「これは正しいからこうすべきなんだ」という理屈が、いまだにまかり通っている気がします。結果がどうなるかなど調べない で、「正しいこと」をすればよいという考えです。 しかし、そんな法律の考えでは、一般の人たちの共感 を得ることは難しくなるのではと思うのです。
だからこそ、法律学に比べて経済学の方が、はるかに元気がいいのでしょう。 このままでは、法律の世界、さらには法律を扱う弁護 士の仕事は、刑罰や損害賠償という、負のインセンテ ィブを扱う、経済学の一分野になってしまうのではないかとさえ思えているのです。

弁護士より一言

少し前までは、「ママと結婚する。」と言っていた息子も、小学5年生の現在では、そんなこと言っていたことすら忘れているみたいです。
しかし、妻の方 は諦めがつかないようで、息子に対して、「ママと結婚してくれるんでしょう?」なんて聞きます。
「悪いけど、僕はそんな『熟女好き』じゃないんだよね!」 そ、そんな言葉、どこで覚えてくるんだよ。 1年1年、子供は大きくなる中、親は取り残されてい くように感じているのです。。。
(2016年12月16日発行 大山滋郎)

 

 

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